皆さんは「当たり前」という言葉をどう捉えていますか?何気なく使うこの言葉の裏には、私たちの可能性を狭める見えない檻が潜んでいるかもしれません。今日はその「当たり前」について考えてみたいと思います。
見えない檻の中で生きている私たち
ある実験で、サメを大きな水槽に入れ、その中に透明な仕切りを設置した後、小魚を入れたそうです。
最初、サメは何度も仕切りにぶつかりながら小魚を捕まえようとしましたが、何度も失敗した後、サメはついに諦めました。
そして実験者が透明な仕切りを取り除いた後も、サメは小魚に近づこうとしませんでした。サメの頭の中には「ここまでは行ける、それ以上は無理」という境界線が刻み込まれてしまったのです。
私たち人間も、実はこのサメと同じように、見えない檻の中で生きているのかもしれません。「これが当たり前」という思い込みが、私たちの行動範囲を制限しているのです。
あなたの「当たり前」は誰が決めた?
「朝起きたら会社に行くのが当たり前」 「年をとったら体力が落ちるのは当たり前」 「子育ては母親がするのが当たり前」 「成功するには学歴が必要なのは当たり前」
こういった「当たり前」は、本当に普遍的な真理でしょうか?それとも単に、社会や周囲の人々、あるいは過去の自分が作り出した思い込みではないでしょうか?
先日、私のクライアントで個人セラピストをしている方と話していて興味深い気づきがありました。彼は長年「セラピーは個別セッションでやるのが当たり前」と思い込み、時間に追われる日々を送っていました。しかし実際にクライアントが求めていたのは「結果」であって、必ずしも「個別の時間」ではなかったのです。
グループセッションや動画教材を取り入れることで、彼はより多くの人に価値を提供できるようになり、自分の時間も取り戻すことができました。「当たり前」を疑った結果、win-winの状況が生まれたのです。
「当たり前」が見えなくなる理由
なぜ私たちは「当たり前」に気づきにくいのでしょうか?それは「当たり前」が水中の魚にとっての水のようなものだからです。魚は水の中にいるからこそ、水の存在に気づきません。
同様に、私たちも自分を取り巻く「当たり前」の中に浸かっているため、それを客観的に見ることができないのです。さらに、人間には「確証バイアス」という傾向があり、一度信じ込んだことを強化する情報ばかりを集めてしまいます。
だからこそ、意識的に「当たり前」を疑う習慣が必要なのです。
「当たり前」を疑うための3つの実践法
1. 「なぜ?」を5回繰り返す
子どもは好奇心から「なぜ?」を何度も繰り返します。この子どものような好奇心を取り戻すことが、「当たり前」を疑う第一歩です。
例えば「毎日残業するのが当たり前」という思い込みがあれば:
- なぜ残業するの?→仕事が終わらないから
- なぜ終わらないの?→業務量が多いから
- なぜ業務量が多いの?→効率化されていないから
- なぜ効率化されていないの?→今までそうだったから
- なぜ変えないの?→変え方を考えたことがなかったから
このように掘り下げていくと、実は「当たり前」ではない選択肢が見えてくるものです。
2. 異なる文化や分野から学ぶ
私たちの「当たり前」は、所属する文化や環境に大きく影響されています。だからこそ、異なる文化や分野に触れることで、自分の「当たり前」が相対化されます。
例えば、日本では「会社の上司に従うのが当たり前」と思われていることでも、欧米の一部では「建設的な反論をするのが当たり前」とされる文化もあります。また、全く異なる業界のアプローチを学ぶことで、自分の仕事の「当たり前」に気づくこともあります。
3. 小さな実験をする
「当たり前」を疑っても、すぐに大きく変えるのは怖いものです。だからこそ、小さな実験から始めましょう。
「朝は忙しいのが当たり前」と思っている人は、一日だけ30分早く起きて朝の時間を自分のために使ってみる。「会議は1時間あるのが当たり前」と思っている人は、一度だけ30分の会議を試してみる。
小さな実験の積み重ねが、大きな気づきと変化をもたらします。
「当たり前」を疑った人たちの物語
歴史を振り返ると、「当たり前」を疑った人たちが世界を変えてきました。
- 「重いものは早く落ちるのが当たり前」と思われていた時代に、ガリレオはそれを疑い実験した
- 「人は空を飛べないのが当たり前」と思われていた時代に、ライト兄弟はそれを疑い飛行機を発明した
- 「コンピュータは大きいのが当たり前」と思われていた時代に、スティーブ・ジョブズはそれを疑いパーソナルコンピュータを普及させた
彼らに共通するのは、「当たり前」を疑う勇気と、新しい可能性を信じる力です。
あなたの「当たり前」を発見するための問いかけ
最後に、あなた自身の「当たり前」に気づくための問いかけをいくつか紹介します。
- 「〜するしかない」「〜するべき」と思っていることは何ですか?
- 「これはできない」と最初から諦めていることは何ですか?
- もし魔法が使えて何でも変えられるとしたら、何を変えますか?
- 5年前の自分が今の生活を見たら、何に驚くでしょうか?
- あなたの業界や生活で「非常識」とされていることの中に、実は価値があるものはありませんか?
これらの問いに正直に向き合うことで、自分の中の「当たり前」が見えてくるでしょう。
「当たり前」を疑う勇気を持とう
「当たり前」を疑うことは、時に孤独で勇気のいる行為です。周囲から理解されないこともあるでしょう。しかし、その先には新しい可能性の世界が広がっています。
私自身、病気をきっかけに「健康であることが当たり前」という思い込みを壊され、逆に「病気だからできないのが当たり前」という新たな思い込みに囚われそうになりました。しかし、その「当たり前」も疑うことで、新たな生き方を見つけることができたのです。
あなたの人生を縛っている「当たり前」は何でしょうか?今日から、小さな疑問を持つところから始めてみませんか?その小さな一歩が、やがてあなたの人生を大きく変えるかもしれません。
人生は「当たり前」で満たされています。しかし同時に、その「当たり前」を超えた先に、本当の自由があるのです。